第56話 ドリップ、始めませんか(豆の選び方編)

  • 2018.05.28
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これまで2回に渡って器具の選び方や美味しく淹れるポイントをお伝えしてきました。さあ、ここまで来たらいよいよ豆の購入です!でもいざコーヒー豆屋さんに行ってみると種類が多過ぎて、いったいどれを選んでいいのか分からないですよね。ということで今回は完結編、自分好みの豆の選び方についてまとめてみました。

店頭には様々な香りや味わいを持ったコーヒー豆が並んでいますが、大まかな味の傾向は次の2つが大きく影響していると思います。
【焙煎度合】
深煎りだの浅煎りだのっていうヤツですね。フレンチローストとかハイローストなんて言い方もあります。コーヒーは生豆だと残念なくらい青臭いだけなのに、煎ってあげるとなんとも芳しい香りに変わりますが、その煎る行為を「焙煎」と呼びます。実は焙煎が浅い(与えた熱が少ない)段階ではどの豆も酸味系の味、焙煎が進む(熱を与え続ける)につれ酸味は弱まり苦味が現れ、たくさんの熱を与えた深煎りという段階では苦味系の味になります。これは銘柄や産地など関係なしに、全てのコーヒー豆に共通の味の現れ方です。

【精製方法】
コーヒーは木に成る実ですが、コーヒー豆とはその実の中の「タネ」の部分のことであり、実からタネの周りの果肉を取り除く行為を「精製」といいます。そして同じ豆でも精製方法によって味わいは大きく変わります。ザックリいうと3タイプ、ナチュラル(天日干し)、ウオッシュド(水洗式)、セミウオッシュド(中間的な方法)があります。一般的にウオッシュドはクリアできれいな風味、ナチュラルは独特の個性が現れやすい方法、セミウオッシュドはその中間?と捉えると分かりやすいかも。

以上の2点から、例えば苦味のあるコーヒーが好きなら、焙煎度合の深いものから選べば間違いはなく、また個性の強い印象か上品でキレイな印象かは、精製方法である程度判断出来るということです。もちろん産地や品種の違いも重要ですが、それは先天的な個性。一般的な価格帯の豆なら加工で生じる味わい=後天的な個性をチェックするのが、好みに近付く早道だと思います。そこで絞られた中から、更に地域や品種といった個性を順に試していくと、自分好みの逸品に辿り着けるのではないでしょうか。

【ブレンドかシングルか?】
これも迷いどころですよねー。聞かれるといつもお伝えしているのは、「楽しみ方の違いである」という考え方です。シングルとは特定の地域、品種、単一のモノということ。つまり農産物としての産地の味を楽しむものです。でもブレンドはシングルの豆を様々に掛け合わせたもの。(こんな言葉はないけれど)コーヒーブレンダーに生み出したい味わいのイメージがあって、それを具現化する為にアレコレと試して創り上げたものです。つまりクリエイティブな作品といえる訳で、作り手がどんな味を表現しようとしたのかを想像しながら飲んでみるのが楽しいと思うのです。そんなことからシングルは概ね明快でシンプル、ブレンドは奥行きや厚みがあると言えます。
コーヒーに向き合う時、大事に思うことがあります。それは「味の好みは人それぞれ」ということ。あなたにとっての好きな味が、必ずしも他の人にとって最高!という訳ではありません。だからお互いに異なる好みや淹れ方に対して敬意を払うこと、イマドキの言い方だと「違いをリスペクトする」ことがとっても大切だと思っています。僕にとってそれは、コーヒーが教えてくれた大切な在り方です。



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