フランスからスペインの端まで続く巡礼路の歩き旅は後半をむかえ、少しずつ前へ進む旅が続く。大人からすれば日々美しい景色とスペインの立ち飲み的存在の“バル”があるだけでどこまででも歩けてしまうけど、娘にとっては単調で飽きてしまうのも否めない…。
娘にとって道すがら必要なのは、歩きの他に何か楽しいことなのだ。
「ねえパパ、何かして遊ぼうよ」
「ねえママ、歩くの飽きてきた」
というフレーズが一日の中で何回か訪れる。この言葉がポツポツ出はじめたらこちらもエンターテイナーとしてなにがしかの楽しみを提案せねばならない。
娘が求める遊びは、おにごっこやかくれんぼ、そして木登りにしりとり…と様々。だいたいの遊びは一緒に楽しめるけど大きな荷物を背負っている僕にとって鬼ごっこだけが唯一大変で、いつも始まって5分もしたらゼエゼエ息を荒げてギブアップしてしまう。
時に家族でダラダラ話すのも娘にとって楽しい時間になったようだ。特にふざけ話から生まれた企画をちゃんと実行するのも副産物的に楽しい。
そんな話の中から大きく分けて2つの企画ができた。ひとつは、途中の村で一番高級なホテルに泊まること。首都だと数十万円を優に超える高級ホテルも、村一番となると数万円で済むのでこれはプチ贅沢として実行決定となった。
そしてふたつめは、おむすびを食べること。これは僕が密かに持ち込んでいた、お湯を注げばできるという緊急用にとっておいたおむすびだ。この存在を知った娘は、ずっとパンとパスタの生活に飽き飽きしていたこともあり、歩くスピードが1.5倍には確実になった気がする。そういうところはきっと僕に似たのだろう。人生は目の前にニンジンをぶら下げるのも大切なのだ!
おむすびは、「おむすびを食べるのに素敵な場所を探す」という新たな目的も生んでくれた。僕たちが理想とした“おにぎりポイント”は、木陰で風が通り、座れる木があること。できれば景色も良い場所だと望ましい…。その景色を求め途中のバルやカフェには見向きもせずに前へ前へと進んだ。
歩くこと数時間。娘が見つけた場所はまさに理想的な場所。僕らはそこでおむすびタイムにした。お湯で戻すだけだからいつものおむすびと比べたら味はどうしても落ちる。でも、今の僕たちには最上の味だった。
小さなイベントを繰り返すこと数日、僕らはどうにか今回の目的地であるログローニョまでたどり着くことができた。
今回の旅路は70km弱だったが、僕たち親子にとってここ数年の中で一番仕事も家事も保育園も気にせずに親子だけで話をし、時間を共有し続けることができた貴重なものとなった。
次はどこへ行こうかなあ。と考える自分と、今回家族と時間を過ごしたからそろそろひとりで秘境へでも…という悪魔の自分との交渉がしばらく続くだろうな。
この記事へのコメント
おこめ
いいですね
ぽんで
日本人はおむすびがないとダメですよね。
ほな
うらやましい家族旅行です。
ほな
お子さんは立派です。
ほな
お嬢さんがえらいです。
ほな
チャレンジ精神を学びました。
ほな
金と物が余っている、日本で足りないのは意欲、愛、人から褒められることです。今回御嬢さんは一番大事な3番目
を取得されました。立派。
やかた
やってみたいです
ほな
お子さんの印象はすごい。
コーヒーブレイク
娘さんの宅急便ごっこ、いいですね!うちの夫もスペイン好きです。また、楽しい話を届けてください。