第64話 結局、旅はしているのだ

  • 2018.10.01
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これまで僕の焙煎するコーヒー豆は、東京・新宿にある東急ハンズで販売してきました。他のハンズで扱って頂いたこともあったけれど、近頃は新宿店だけに集約する形で落ち着いていました。でもこの度、渋谷の東急ハンズが開業40周年を迎えるにあたり、コーヒーセミナーの講師としてお声掛けを頂き、更にコーヒー豆も定番商品として取り扱って頂くことになりました。(パチパチ!)そこでまずは店頭での販売実演をおこなうことになり、僕は9月のとある三連休の最終日に、渋谷の東急ハンズを訪れました。実はこの出来事は、僕にとってひとつの記念すべき出来事でした。
東急ハンズ渋谷店。
傾斜地を利用したスキップフロア構造は、今もインパクト大。
“STUDIO”と称されたコーナーが新たに作られリニューアル。
ここで実演やセミナーを行います。
大学生の頃、僕は自分の未来像を描くことが出来ず、希望を失っていました。だから卒業後はあてのない旅に出ようと思っていました。(今思えば、なんてアホな。)でも当時の友人が、大学で開催される業界説明会へ行くのに、一人じゃ嫌だから一緒に行かないかと誘ってきました。それは各ビジネス業界の企業担当者が来て、学生に様々な解説をしてくれる機会でした。友人が誘ってくれたのは小売業界で、来るのは東急ハンズの人でした。僕は何となく思い付きで一緒に行ったのですが、そこで企業としてのハンズの魅力を知り、就職する気なんてなかったはずが、唯一働いてみたいと思ったのでした。僕の“単願”の就活が始まりました。

就職活動にはスーツが必要です。でも1社しか受けないし後々着ることを考えて、紺色のアレではなくグレイのヘリンボーン柄のスーツを買いました。当たり前のことですが、面接や試験のたびにヘリンボーンなんて僕だけ。紺色のうねりの中で、僕は幾度となく溺れそうになりました。でも運良く、本当に運良く内定をもらい、東急ハンズに就職することになりました。そして配属されたのが渋谷店。90年代の春のことでした。

そこから転職することもなく長い間東急ハンズに在籍した僕は、いろいろ想うところあって唐突にハンズを卒業します。2000年代の春のことでした。更にいろいろあってコーヒーの勉強と経験を積み、様々な出会いと助け、運の良さに救われてDay Drip Coffeeを始めました。そこから巡り巡って、社会人としてのスタート地点だった“渋谷のハンズ”に、もう二度と戻ることはないと思っていたあの場所に、形を変えて再び立つことになったのです。しかも今回僕の商品を扱う階は3Cフロア。そこは僕が最初に仮配属された場所です!奇跡の偶然、まさに奇遇です。

実演当日。まずは通用口にある警備窓口の受付を済ませます。警備員さんの中にあの頃いらした方がまだ勤務されていて驚きました。そこから館内の受付部署へ。僕も担当した事のある部署です。窓口に行くと以前お世話になった顔見知りの方が担当されていて、お互いにビックリ。その後も出世した同期が顔を見せてくれたり、渋谷店勤務の知り合いが休日なのにわざわざ来てくれたりと、様々な当時の知り合いに再会出来ました。
今回から構成を見直し、パッケージも変更した新ラインナップです。ちなみにこの向かい側にはサーモス製品が陳列されています(笑)
この日はSTUDIO内のカウンターにも商品を並べてアピールしました。
実はSTUDIOのイメージビデオに出演しています。
店頭でチェックしてみてください。ホームページからも見られますよ。
実演を終えた帰り道、当時の行きつけだったビアホールに立ち寄りました。その店の店長は今も同じ方で、あの頃と変わらぬ優しい笑顔で迎えてくれました。穏やかな酔いの中で変わりゆく街並みを眺めながら、お互いのこれまでのこと、そしてこれからのことについて言葉を交わしました。その日一日を通じて、僕はここが自分を育ててくれた原点であることを改めて思い知り、またこれまで支えてくれた多くの人に、心からの感謝の念を抱いたのでした。
これからも自分が成すべき新しい未来を切り開いていこう、
と思うのでした…。


この記事へのコメント


おかめ

仙台でも、セミナー、開いて、ください。


ちゅみどん

販売してるのは渋谷店だけなんでしょうか?


ほな

成人の日に講演してほしいです。


norikky

とても素敵なお話ですね!
これから就職活動をする学生さんにも読んで欲しいです。

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