“鍛冶体験”というワードを耳と目にした瞬間、僕は心が沸騰し、そしてすぐに飛びついた。「鍛冶」はものづくり好きにはたまらないサウンドだ。まだ刃物づくりは縁が無かったので、僕はどうしてもやってみたかったのだ。
向かった先は熊本県の人吉市。ここには蓑毛鍛冶屋さんという西日本で唯一鍛冶体験をさせていただける場所で、農具をメインにした鍛冶職人を代々続けている9代目と10代目が迎えてくれました。
小さな工場に入るとすぐに油と水と鉄のにおいが鼻に入り、そしてすぐに汗ばむような暑さを感じる。屈強そうな身体をしているのに優しそうな笑顔で立つ9代目と10代目の職人のオーラも相まって、まだ何も始まっていないのにすでにたまらない…。
今回挑戦したのは和包丁。丁寧に鉄に鋼を挟む方法や機械類の仕組み、そして包丁づくりの流れを説明して頂いたら早速作業が始まる。あらかじめ大まかに形を作っておいて頂いた包丁の原型を熱く熱して、まずは機械でガンガン叩いていく。和包丁は背が厚く、刃先に向けて薄くなる。そして全体の厚さと長さをここで調整していく。
鉄を叩くための機械は足でレバーを踏み込むと動き出すシンプルな物で、昔でいうハンマーの代わり。鉄が叩かれる音が工場中に響き渡るたびに、僕の心の中はどんどん高ぶり続けていく。
厚さと大きさを決める叩き作業に、表面を整え綺麗にする叩き作業。形を決める整形作業、そして荒研ぎに仕上げ研ぎ。ほとんど機械を使っているのだけど、やっている作業工程はすべて時代劇に出てくる鍛冶職人と大きく変わらない。そこが鍛冶の面白い所だ。
様々な作業を経て、最後に砥石で刃物の切れ味を決める作業をしている時に鍛治職人の神髄たる一面を見ることができた。
僕はいつも刃物を研いでいる時に、どうしても刃の持ち手に近い部分がうまく研げない癖がある。せっかくの機会なので相談もかねて見てもらうと、
「うん。ここは研げていないね。こういうの“真っ白”って言うんだよ。」
と、ニコニコ顔の9代目に言われる。コツを教えてもらいながら何度も研いでは確認してもらうも、毎回「まだ真っ白!」という返答が帰ってくる。
見かねて僕の包丁を取った9代目は、一瞬鋭い目に変わったかと思うとほんの十数秒砥石に刃を当てただけでビシッと素晴らしい切れ味に仕上げてしまったのだ。これこそが職人。その姿は本当に格好良かった。
今回はかなり“神の手”が入り、そしてある程度形が決まっているとこからの鍛冶体験だったけど、いつかは鉄のかたまりから作ってみたい。そう思ってしまうくらい楽しい体験をさせていただきました。
この記事へのコメント
おこめ
マイ包丁いいですね
ぽんで
日本の伝統を感じます
ほな
職人さんのいい笑顔。
ほな
マイ 包丁はうらやましい。
よもちゃん
職人さんが身近な存在だったら物をもっと大事に使いたくなります
ほな
うれしくなります。
おかめ
包丁、欲しくなってきた。でも、使ってないのも有るし、悩むところだ。