偶然が偶然を呼んで、突然借りることになった店舗物件。「いつかはお店を…」と思っていた僕にとって、それはとても幸運な出逢いでした。でも一方でその時期は数年先の事だとも思っていました。一昨年ユフラトーキョーという活躍の場を得て、ひとまず自分の居場所を持つことは出来ていたし、今年はユフラを起点に更なる飛躍を図ろうと思っていたのです。ちょうどユフラ代表の小川さんと、今年の営業方針を決める打合せをしたばかりでした。そこで僕はユフラに対する自分の想いを熱く語り(笑)、より密な関係を築いて共にステップアップしていく“未来図”を一緒に描き始めていたのです。物件との出逢いは、よりによってそんなタイミングだったのでした。
また更に僕を悩ませたのが、未来図を話していた時の何気ないやり取りです。虫の知らせなのでしょうか、何かのやり取りの際、小川さんが「すぐに開業するとか、ないっすよね?」と。僕は「いやぁ~さすがに今年すぐには無理だねぇ。資金も足りないし…。」逆に僕からも「もし僕がいなくなる事になったらどうする感じなの?」と聞くと「そうですねー、閉店するかもしれませんねー。」という会話があったのです。お互いあまり深く考えずに何となく交わした言葉でしたが、その伏線を憶えていた僕は、一つ伝え方を間違えれば大変な事態になりかねないと憂慮していたのでした。
次のミーティングは、ちょうど物件を借りると決めた日の翌日でした。とにかくそこで伝えるしかないです。僕は覚悟を決めました。そして出来る限りのソフトランディングを図るため、僕が卒業した後のユフラトーキョーをいかに盛り上げていくか、なんていう資料まで用意しました。ミーティング当日は薄曇りの肌寒い日でした。店に近付くにつれ入り口のガラス戸の向こうに小川さんが見えてきます。入り口以外のシャッターが降ろされたままの店内は暗く、急に言い知れぬ緊張感が襲ってきました。ドアを開けて入る時、その緊張感をまるで寒さによる武者震いのように誤魔化している自分がいました。
席に着くと、さっそく小川さんが前回までのおさらいとその日の議題を述べます。ひとしきり話終わったところでいよいよ本題を切り出します。「僕の方もあの後いろいろ状況が変わってきてて、ちょっと重要な話があるんだよね。実は…物件が急に見つかってね。それでね、借りる事にしました…。」ウォー、この緊張感!僕は小川さんを見つめます。彼はこう言いました「えっ!マジッすか!それはおめでとうございます!!マジ、ちょっと、いや~、なんかエモいっす!」彼から発せられた言葉は、大きな一歩を踏み出すことになった僕への祝いの言葉ばかりでした。
正直言うと、彼がユフラトーキョーや自分自身の先々を憂い、落ち込んだり困ったりしてしまわないか、とても不安でした。でも身構えていた僕は、思わず掛けられた祝福の言葉に、驚きと、嬉しさと、彼に対する恥ずかしさが交ざり合った複雑な想いで、思わず目元が少し緩みかけました。彼は、以前から自分の店を持ちたいと僕が言っていた事を、大切な夢としてずっと気にかけてくれていたのでした。まだ夕方と呼ぶには陽のある時間でしたが、彼からはユフラ取り扱いのフィンランドビール、ラピンクルタを僕に、僕からはデイドリップカフェ開催時に扱っている日本の逸品、キリン・ハートランドを彼に手渡し、日本語で「乾杯!」フィンランド語で「Kippis!」と言って乾杯をしました!爽やかでほろ苦い喉越しに酔いしれた出来事でした。
この記事へのコメント
ぽんで
地元の友達っていつまでも大切ですよね
ほな
大勢のお友達はうらやましい。
ほな
開店おめでとう、sing a song .