先日SNSを見ていたらこんな話に出くわしました。子供の頃から読書が苦手だと思っていた人が、実は読書が苦手なのではなく、そこに使われている書体“明朝体”が苦手だったのだと、大人になってから判明した…という話です。ディスレクシアと呼ばれる学習障害のひとつだそうです。具体的には、知的な問題も視覚や聴覚にも異常は認められず、教育をしっかり受けていながらも、読み書きが著しく困難な状態を表すようです。日本語では失読症とか難読症、読み書き障害などと呼ばれています。でも明朝体が苦手ってどういうことでしょうか。
日本では多くの場面で明朝体とゴシック体という書体が使われていますね。明朝体はその名の通り“明王朝”の時代に確立し、木版や活版の印刷用書体として広まったようです。その特徴は、“ウロコ”と呼ばれる三角形の装飾が付くこと。また縦線が太く、横線は細いこと。あと“はね”の形が独特です。それらの特徴によって可読性(読み易さ)が高く、長文を読んでも疲れにくいことから新聞や書籍に多用されています。ゴシック体はウロコがほぼ無く、縦横の線はほぼ同じ太さ。視認性(遠くからでも見える)は高いけど、可読性はチョイ低い。PCやスマホの画面では明朝体の方がかすれて読みにくいこともあるようですが。
今回僕が知った事例は、明朝体だとチカチカして大変読みにくく、文章として頭に入ってこないそうです。文章を理解するのに大変な労力と疲労感を伴うそうで、人によっては長時間読むと強い頭痛や嘔吐を繰り返したり、本の上で文字がうねったり踊り出すことも…。想像してみてください。それが幼い頃の自分の身にだけ起こり、でも親や教師にディスレクシアに対する知識が全く無かったとしたら…。きっと自分がバカで、ダメな人間なのだと思い込み、サボり癖のある問題児扱いされ、自信を失い、学校も勉強も嫌いになってしまうでしょう。
そんな問題に対するひとつの答えとして、近年はユニバーサルデザインフォント(UDフォント)と呼ばれるものが開発されるようになりました。これは文字のバリアフリーとでもいう物で、誰でも読み易く、認識しやすいデザインを目指したものです。例えば文字が小さい時、濁点と半濁点の違いが判別し易く改良されていたり、道路標識などで遠くからでも読み易かったりと、様々な場面での「困った」をフォローするものです。明朝体の判読が難しい今回のケースの場合も、このUDフォントやゴシック体に変えることで、長文でさえスラスラと読めたそうです。
書体によって判読出来ない人が存在するって、全く知りませんでした。それ以前に文字が読めないということが、具体的にどういう状況なのかちゃんと想像が付きませんでした。僕は早速ウチの店のメニューをUDフォントに変更しよう!なんて思ったのですが、更に読み解いていくと一筋縄にはいかない話だと分かりました。なんと、明朝体の方が読み易いという人もいるとのこと!ヒョエ~そりゃそうですよね、『人によって異なる』ことがポイントだもの。ちょっと考えれば気付くはずが、想像力が全然足りていない自分の浅はかさにはがっかりします。
当事者の方も書いていましたが、一番良いのは誰もが自分にとって最適なフォントを自由に選べる環境です。学校なら、例えば教科書がタブレット併用になり、どの児童生徒も読み易いフォントを自由に選べる様な仕組みがあれば、学習の理解度は公平になり大きく高まると思うのです。ディスレクシアと気付かず勉強が苦手な子と一蹴された人にも多くのチャンスと幸せが訪れるかもしれません。それが多様性ということの本質なのではないでしょうか。そんな視点で僕らの暮らしを眺めると…残念ながらまだそれ以前の、“性別の違い”で足踏みしている状況ですが。
この記事へのコメント
おこめ
面白かったぇす!
ほな
コーヒー辞典は面白い。
ほな
分厚い辞書に挑戦が素晴らしい。
江戸っ子
フォントって 好みの問題ではなかったなんて知りませんでした。
すーうどん
面白いですね
コーヒーブレイク
素敵な発想ですね!ディスレクシアのことはよく聞きますが、明朝体などの形状については今まで気づきませんでした。5Gが進化したら、解決策が見つかるかも。
ほな
これはすごい発見です。