第141話 スケッチとクリスマス

  • 2021.12.02
  • 2014
  • 3
前回のコラムでイラストレーター・サイトウマサミツさんのスケッチ画集『Sketch,Sketch』をご紹介しました。ご覧になった方はいらっしゃるかな?この画集をとても気にいってしまった僕は、ウチの店Day Drip Coffeeでも販売をさせて頂くことにしました。そして画集を見ながら味わうためのオリジナルのブレンドコーヒーも作ることにしました。すると、この話と時を同じくして店の常連客カップルから「今年はクリスマスブレンド作らないんですか?」と誘導質問をされました(笑) 全く予定してなかったはずなのに思わず「や、やります!」と答えてしまった結果、この年末は同時に2種類のブレンドコーヒーを開発することになりました。
さあどんなブレンドコーヒーが出来るかな?
まずは画集のお供のためのコーヒー『Sketchブレンド』。僕が思っている味わいのイメージは、軽やかだけどしっかり個性があり、甘味と優しさがある感じです。それは描かれた数々のスケッチが醸し出す雰囲気はもちろん、本の装丁デザインに使われた地色のイエローから受けるイメージです。そこで焙煎度合が浅煎り~中煎りの豆から選んで組み合わせることにしました。どのコーヒー豆も焙煎度合が浅煎りだとフルーティーな酸を感じ、深煎りだとカカオのような苦味になります。中煎りはそのバランスが取れた味わいなので、Sketchブレンドは浅煎り寄りの中煎りと言えます。
画集『Sketch,Sketch』とSketchブレンド。軽やかさだけじゃない味わい。
僕は浅煎り1種と中煎り2種を選ぶとそれぞれ単品でドリップし、そのコーヒー液を様々な比率でカップにブレンドしては味見を繰り返します。と言っても何をブレンドするとどんな感じになるかはある程度想像は付くので、実際はザックリ想定していたレシピの微調整と確認という感じです。配合が決まったら今度は実際に豆をその比率でブレンドし、それをドリップして味見します。はい、イイ感じになりました♪ このように、単一品種ごとに焙煎した豆を後からブレンドすることを「アフターミックス」と言います。ウチの店のブレンドは全てアフターミックスで作っています。
“カッピングスプーン”と呼ばれる専用のモノもありますが、
これは普通のスプーン。
さてお次は『クリスマスブレンド』です。この時期はチョコや生クリームを使った洋菓子を食べる機会が多いと思います。コーヒーとスイーツは同系統の味わいを合わせることが基本なので、深煎りを軸にしつつ、苦みや重さを抑えてスイーツの顔を立てるイメージをしました。考えた末に出した結論は「プレミックス」での焙煎です。これは生豆(“きまめ”ではなく“なままめ”と読みます。)の段階でブレンドし、それを一発で焙煎するやり方です。メリットはどの豆も同じ焙煎になるのでまとまりの良い味わいになる事。逆に豆ごとの個性を引き出す焙煎は難しく、それがデメリットでしょうか。これも経験上ある程度は想定出来るので、イメージした比率でブレンド、焙煎をして味見します。あえて普段は深煎りにしない豆を用いたりして、イメージ通りのブレンドが完成しました。
これが生豆。コロンビアかな。新品の畳のような色で青臭いです。
一口にブレンド作りと言っても色々な方法・考え方があります。豆の種類がいろいろ有るだけでなく、その焙煎度合や配合比率まで踏まえると、ブレンドの組合せは無限大です。またそれ以前に、傷んだ豆などを取り除く“ハンドピック”と呼ばれる作業を焙煎作業時に行うことで、コーヒーが持つ味わいを更にクリアで明快なものに仕上げます。ブレンドコーヒーは焙煎士が抱いたイメージを形にしたものですから、それはクリエイティブな作業を経て作られた味わいという作品であるとも言えます。この話は以前もしたかと思いますが、繰り返しお伝えしていきたい大切なことだと思っています。良かったら僕の作品、お試しください。
作品作りの様子。楽しい作業です♪
2種類のブレンドはネット通販でも取り扱う予定です。


この記事へのコメント


ほな

黄金色がキラキラ。


ほな

スプーンの鮮やかさ。


江戸っ子

今年のクリスマスブレンドも自信作の様子ですね。近くに立ち寄った際には、味を確かめに伺いたいです!!

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