第213話 だから今年も少し深煎り

  • 2024.11.21
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ようやく季節本来の肌寒さを感じるようになってきました。つい最近まで暑かったので、感覚的には季節感が追い付かないけど、もう11月も下旬!お店でも今年のクリスマスブレンドを用意する時期となりました…ひえー。焙煎機と生豆を前にして、今年のブレンド作りについて思案しております。とは言え、クリスマスブレンドは毎年深煎り系なんですけどね。当店の焙煎機は深煎りが得意なタイプなので、作りやすいブレンドです。そう、実は焙煎機にもタイプがあるんですよ。今回はそんなお話を。
当店の焙煎機。とても小型です。
業務用で使われる焙煎機は、大きく分けて「熱風式」「直火式」「半熱風式」の3タイプがあります。熱風式はその名の通りバーナーで作った熱い風を、シリンダー内に送り込んで焙煎します。温度管理がしやすく、安定した焙煎が可能です。味わいはクリアで柔らかな印象だし、浅煎りが焼きやすいと思います。仕上がりも均一なので大量焙煎に向いており、大手メーカーの豆はほぼ間違いなく熱風式です。それだけに、どこでどんなコーヒーを飲んでも熱風式の焙煎豆なので、その味わいが普通のコーヒーの味とも言えます。
内部はドラム式洗濯機をイメージすると分かりやすいかも?
直火式は、パンチングの穴の空いたドラムの下から、バーナーの炎で焙煎する方式です。豆にしてみれば、穴の向こうに直接火が見えるので“直火”ですね。当店の焙煎機もこの直火式です。豆にダイレクトなカロリーが加わるので、メリハリのある独特の香味に仕上がります。深煎りはコクのある感じに仕上がって美味しいです。でもドラム部分は風通しの良い構造なので、周辺環境の温度や湿度の影響を受けやすく、焼きムラのリスクもあって、習得するには経験と勘を養う必要があります。それだけに直火式を扱う店は非常に少数派です。
業務用焙煎機の熱源はガスが主流。当店のは都市ガス用。
半熱風式は基本的に熱い風で焙煎しますが、穴の開いていないシリンダーの下からバーナーで加熱もしていて、少し直火式のニュアンスも出せる、まさに両方の中間的な方式です。こちらも熱風式同様に温度管理がしやすく安定的です。それは再現性が高いという意味でもあります。だから熱風式・半熱風式は、焙煎時の温度やガス圧、その他の操作などを時間毎に記録したもの=焙煎データのプロファイル(積み上げ)があれば、そこそこの焙煎はすぐ出来るようになると思います。もちろんそれだけでは仕事になりませんが。
ダンパーと言って、空気の通り抜け具合をコントロールします。
僕が初めて焙煎を学んだのは、以前働いていた焙煎所での事ですが、そこは古い直火式のものでした。だから最初に言われたのはデータではなく、「豆を見て、豆を嗅ぎ、豆に聞け」でした。「ひとまず500回くらいやると、基本の形が何となく分かってくるよ。」と言われましたが、これは実際その通りでしたね。でもやっとスタートラインに立てたというだけで、そこから千本ノックのような日々がずっと続くのでした…。たぶん熱風・半熱風式の方が最短で焙煎士になれると思います。流行りの浅煎りコーヒーもその方が合っているし、なおさらおすすめです。
右が豆温度計、左がガス圧力計、上のツマミは排気モーター制御のもの。
でも僕自身は、せっかく自分で焙煎屋をやるのなら、大手のコーヒーと同じ味わいの焙煎方式を選んでも差別化しにくいし、何よりつまらない気がして。自分は焙煎の入り口がたまたま直火式だったに過ぎませんが、でもそれは幸運なことだったと思っています。自分が好きな焙煎度合いが一番美味しく焼ける焙煎機を扱えるようになれたのですから。今年のクリスマスブレンドも、結局そんな僕好みのコーヒーになりそうです笑。
今年も美味しいクリスマスブレンドを作りましょうかね♪


この記事へのコメント


hirune

焙煎の香がしてきます~!

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