エチオピア。前々回のコラムでも少し触れましたが、僕の店ではマンデリンと共に当初から取り扱っているコーヒー豆です。皆さんも名前くらいは聞いたことがあるかも知れませんね。結構メジャーなコーヒーだと思うのですが、意外なことにコラムではエチオピアについてちゃんと書いたことがなく、今回初登場です。コーヒーの世界にとっては、その歴史を語る上で無くてはならない地名でもあります。

エチオピアはやや浅煎りに焙煎していて、色合いが薄い茶色です。
エチオピアはアフリカ大陸の東にあり、国土の大半が高原という標高が高い国です。首都のアディスアベバは2,400mもあるそう。富士山でいうと5合目です。標高の高さはとても重要で、良質なコーヒー栽培に必要な条件なのです。世界のコーヒー生産ランキングでは第5位。一般的なレギュラーコーヒー用のアラビカ種に限ってみると第3位。国民の約20%がコーヒー産業に従事しているという、まさしくコーヒー大国です。なぜそれほどなのかというと、「コーヒーが生まれた場所」だからです。

挽いてみたところ。粗めです。もうちょい細かくて良いと思います。
世界で最初に「コーヒーの木」が発見されたのがエチオピア。それを人が飲用するようになったきっかけは諸説ありますが、有名なのは「羊飼いの少年」伝説でしょうか。山に生えていた赤い実を山羊が食べると元気を取り戻した。少年は実を村へ持ち帰ったところ、それを食べた僧侶たちは眠らずに修行が出来るようになったので、煮出して飲む方法が試みられ…というものです。少年の名はカルディ。コーヒーと輸入食材の某ショップ名でよく知られた名前ですね。

注湯すると白っぽい泡が立つのも浅煎りの特徴。
エチオピアの味わいの特徴は、何といっても良質な酸味です。日本では酸化の「酸」と同じ文字を使うので、酸味はネガティブな印象もありますが、正確にはフルーティというべき華やかな味わいのことを指します。それは柑橘系やベリー系などと言われるもので、香りの印象にも通じます。酸味系の味わいは焙煎が深くなるほど飛んでしまうので、浅煎りに仕上げるロースターが多いと思います。上手く焙煎出来たエチオピアはまるでレモンティーのようでもあり、「コーヒーの貴婦人」とも呼ばれます。

少し紅くて、香りも華やか。紅茶感があります。
そんなエチオピアですが、近年は困った問題が起きました。エチオピアのコーヒー豆は船積みして、紅海を通って日本まで運ばれてきます。ところが対岸のイエメンという国で、反政府武装組織フーシ派(←聞いたことあるでしょ?)が、紅海を航行する船舶を攻撃するように。このリスク回避により船便が減ったせいで、日本に向けて輸出予定のコーヒー豆が、港や途中の倉庫で数ヶ月もストップしたのです。その間に高温でダメージを受けてしまい、いざ到着してみたら豆が傷んでいた…ということが多くの輸入商社で起きました。

これは輸送が滞る前の正常な豆。そんなにハイスペな豆は扱いませんが、等級は最高のG1。というより開店以来G1しか扱ったことがありません。
フーシ派はなぜ船舶を攻撃したのか?それはガザ地区で起きているイスラエルとハマスの戦闘に由来していて、イスラエルを出入りする(と彼らは主張する)船舶を攻撃しているのです。TVで見かける質の悪い映画のようなニュースも、決してフィクションではなく、僕は直接的に、皆さんも間接的に影響を受けているかも知れません。良くも悪くも波紋が拡がるように世界は繋がっています。逆に言えばこちらからの波も伝わるはずなので、自分からは小さくても良い波を立てられたらと思います。幸せなバタフライエフェクトが起きることを願っています。

まず自分の手が届く範囲くらいは、望ましい世界にしてみようかと。
この記事へのコメント
定年ゴルファー
毎日2~3杯コーヒー飲んでますが、分かりませんがエチオピア産コーヒーは飲んだことがありません。
今度飲んでみます!!
おこめ
いいですね
はる326
酸味といえばノルウェーのコーヒーも好きです。
ほな
コーヒーはエチオピアから始まった。いい勉強になりました。
ポンちゃん
コーヒーにまつわる世界的な背景と歴史。 勉強になります。
かぐや姫
コーヒーのふるさとへの旅
面白かった!
今日もコーヒーと仲良く頑張ります
コーヒーブレイク
異国の風が吹いてるようです
ぽんで
歴史を知ることは本当に楽しいです
コレステロール
世の中色々と問題ばかりです。
スッチー
良いです。
hirune
香がただよってきます!