第221話 東ティモール(前編)

  • 2025.03.20
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ここ最近コラムではエチオピアとマンデリンの2大定番コーヒーについて取り上げました。そんなコーヒー特集?のトリを飾る今回は「東ティモール」についてご紹介したいと思います。皆さんにはあまり馴染みのない名前ですよね。コーヒー業界内でもシェアが小さくマイナーな存在のコーヒーです。でも以前から時々このコラムでその名を記したことがあるし、テーマとして取り上げたこともあったので、聞いたことはあるという人がいるかもしれませんね。当店にとって無くてはならない“定番中の定番”、それが東ティモールです。
東ティモールの豆は深煎りと中煎りの2種類をご用意しています。こちらは深煎り。
まずは東ティモールの場所から解説。インドネシアの東南端、ティモール島という島の東半分を占める国です。オーストラリアのちょい北あたり、と言ったら分かるでしょうか?アフリカのどこかと勘違いする人が多いのですが、アジア界隈です。大きさは首都圏4都県(東京・神奈川・千葉・埼玉)を足したのと同じくらいですが、人口は約134万人(ちなみにさいたま市が135万人でほぼ一緒)です。そして人口のおよそ25%、4人に一人がコーヒー関連産業に従事しているそう!
これは中煎りに焙煎した豆。煎り止めの瞬間はいつも少し緊張します。
ティモール島は16世紀の大航海時代にポルトガルの植民地となりました。その後オランダも進出して、西半分がオランダ領、東半分がポルトガル領として長らく支配下にありました。コーヒーは19世紀にポルトガルによって持ち込まれ、20世紀前半には大規模なプランテーションも作られたようです。一時期、第二次世界大戦で日本軍が占領するも終戦で撤退し、西側のオランダ領はインドネシアの独立に伴ってインドネシア領へ移管。でも東半分のポルトガル領は植民地のままでした。
昨年はいろいろあって、いつものエリアとは別エリアの東ティモールを入手しました。何があったのかは後編にて。
1975年にいよいよポルトガルから独立という時、何と隣りのインドネシア軍が騒乱に乗じて侵攻し、勝手に併合を宣言しました。国連は侵略行為を非難し、東ティモール住民の自治と擁護の決議を可決したのですが…アメリカ、オーストラリア、日本はインドネシア側を擁護して否決に回りました。当時はオイルショックの只中で、沖合にある海底油田の権益欲しさに、インドネシアの侵略行為に目を瞑ってしまったのでした。そのため約25年もの長きに渡り、侵略占領状態が続く結果となってしまいました。
東ティモールの豆はどこか穏やかで優しいです。苦労人ってそういう感じじゃないですか?
2002年、インドネシアの独裁政権が倒れたおかげで、ついに独立を果たしました。今世紀で最初に独立した若い国の誕生です。しかし長く続いた虐殺と破壊行為で、多くの民間人と国の機能が失われていました。ただ山間部には自生したままのコーヒーの木がたくさん残っていました。そこで世界中からNGOなど多くの支援が入ってコーヒー栽培が復活、貴重な外貨獲得のための産業となりました。日本からはピースウインズジャパンやパルシックといった団体が、現在に至るまで支援を継続しています。
様々な苦難を乗り越えて、ここまでやって来た東ティモールのコーヒー。今でも大変なのですが。
当店にはオリジナルのブレンドで「ビターブレンド」というものがあります、これはコロンビアの豆がベースなのですが、インドネシアのマンデリンと東ティモールの豆を加えています。敵対していた二つの国のコーヒー豆です。それがカップの中で一つになり、豊かなハーモニーを生み出すことは、僕にとって単なるブレンドを超えた“平和の象徴”でもあります。いつも同じことを言ってしまいますが、日本で美味しいコーヒーを飲めるということは、世界がなんとか平和のバランスを取り続けようとしている証だと思っています。
コーヒーの苦味は、これを支えてきた人々の想いなのかも?
ということで、後編では東ティモールで起きたコーヒーの奇跡と未来などを。


この記事へのコメント


ゆらん

美味しいコーヒーを飲みながら幸せを噛み締めようと思いました。


こずえ

アフリカの国かと思ってました。興味を持ちました。これからも記事を読みたいです

  • 黒田 悟志

    僕も最初はどこだか分かりませんでした。今後ともどうぞよろしくです。


mii

後編が気になります

  • 黒田 悟志

    ありがとうございます!後編は近々公開です!


コレステロール

平和なのが1番です。

  • 黒田 悟志

    まったくです。争いが少しでも良い形で終わって欲しいです。


ポンちゃん

平和でないとコーヒーは楽しめないのですねぇ~

  • 黒田 悟志

    そうなのです!Coffee & Peace!


チャロパパ

コーヒーおいしいですよね

  • 黒田 悟志

    美味しいです!こう言うとアレですが、自分で淹れたのが美味しくて(笑


hirune

気候などがとても良さそうですね!
コーヒーも気持ちよく育ってそうです

  • 黒田 悟志

    雨季と乾季がある熱帯モンスーン気候の国ですが、コーヒー栽培地は標高の高い場所なので、それなりに涼しいと思います。


mako

東ティモールのコーヒー事情を知らなかったので、
興味深く読ませて頂きました。

  • 黒田 悟志

    コラムとしては情報過多で、読みにくいかなと思っていたので、ありがとうございます!


ぽんで

興味がわいたので飲んでみたいです

  • 黒田 悟志

    是非〜♪


おこめ

いいですね

  • 黒田 悟志

    ありがとうございます!


ほな

東ティモールのコーヒーは日本に輸入されるときの関税はいくらですか。商社経由ですか。
アメリカが輸入するときは25%関税かけますか・

  • 黒田 悟志

    コーヒーの関税は生豆だったら無税です。東ティモール豆の仕入れは商社ではなく、パルシックというNPOから購入しています。東ティモールを独立初期から支援し続けている日本の団体で、栽培指導など多方面に渡り尽力されています。

    アメリカの関税状況はわかりませんが(ただし食料品は無税〜低関税)、メキシコのコーヒー豆に25%上乗せなのは報道の通りだと思います。カナダはそもそもコーヒー豆の栽培を行っていないので、無関係です。


コーヒーブレイク

世界情勢とも結びつき、今あるコーヒーを飲める幸せが大切なものであることを感じます。

  • 黒田 悟志

    そんなふうに感じて頂けて、コーヒーに成り代わって感謝申し上げます


スッチー

素敵です。

  • 黒田 悟志

    ありがとうございます!

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