第96話 DIYの焙煎機

  • 2020.01.27
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ある良く晴れた冬の午後。知り合いが有機レモンをお裾分けしてくれるとのことで、僕はいつもの自転車に乗り、ある場所へと向かいました。そこは神奈川県川崎市の北部、地図で見ると東京都へ食い込むように飛び出した、逆さまのイタリアのように見えます。その“逆さイタリア”の、ナポリから内陸へ入ったあたり(って、全然伝わらない喩えだけど)にある、黒川という所にある「川崎市黒川青少年野外活動センター」への初訪問でした。
たわわに実ったレモン。
収穫されてきたそうです。
黒川はいわゆる東京・多摩エリアの一角です。この辺りは付近の自転車乗りがトレーニングのために走りに来るような丘陵地帯で、東京オリンピックの自転車ロードバイクのコースにも選ばれたほどです。僕はそんな幹線道路をヒィヒィ言いながら走って行ったのですが、黒川へ向かう道へ逸れると、急に多くの自然が目に付くようになりました。そして最後の激坂を上った先には、驚くほどの豊かな自然に囲まれた施設が現れました!
右がセンター所長の野口さん。通称・ロバさん。
某TVのキッ〇ン戦隊クッ〇ルンにキャンプの達人として登場。
建物に入るとスタッフの皆さん、そして僕に声を掛けてくれた張本人、野口さんが迎えてくれました。野口さんはここのセンター所長で、DIYや手作りの達人です。野口さんと知り合ったのは、僕が東急ハンズでコーヒー豆の試飲販売をしていた時、買い物のついでに立ち寄ってくれたのがきっかけです。野口さんはその頃、家庭で出来るコーヒー豆の自家焙煎にハマっていた時期で、焙煎について詳しく質問をされ、僕も可能な限りお答えしたことから親しくなりました。
奥の機械が手作りの手回し焙煎機。熱源はガスコンロ。
豆の焼き具合もキレイ。
センターの片隅には有機栽培のレモンが大量に置いてありました。野口さんがビニール袋にたくさん入れようとするのを丁重にお断りし、僕はサイクルウエアのポケットに入る分として、4つだけ頂戴しました。なぜならレモンを頂くのは訪問の口実だったからです。この日の僕の一番の目的は、野口さんが自作したというコーヒーの焙煎機を見せてもらうことだったからです。それは空き缶などを利用して作られた大変シンプルなものでしたが、手回しのドラム式タイプで、釜の内部には攪拌用のフィンも付いており、基本構造は業務用の焙煎機と変わらないものでした。せっかくの機会だからと、実際に目の前で焙煎を見せて頂くことになりました。
ハンドピックのことをお伝えしましたが、既にご存じではありました。
さすがです。
焼き始めから豆の様子を観察していると、焙煎の進行順に見られるべき変化が、適切なタイミングで起こるではないですか!ムムム、これはかなり期待できるかも?やがて豆の弾けるパチパチ音が聴こえると、それは焼き上がりの合図♪ 豆をザルに取り出し、一気に冷却して焙煎終了です。焼きムラが少なくシワも伸びて膨らんだ、とてもキレイな焼き上がりです。充分冷ましてからドリップして味見をしました。一口飲んだ僕は、その絶妙な味わいに衝撃を受けました。それは「廃材で作ったものでも、ここまで美味しく焼けるのか!」という驚きと、「自分がいつも悩みながら焙煎していることは、一体なんだったのだろう…」と思わされる、焙煎に対する潔さへの感動でした。
野口さんが作った点滴式の水出しコーヒー器。
何でも自作しちゃう凄い人。
何か設計図がある訳でもなく作られたものですから、普通に考えれば最初は火力が伝わり過ぎたり、カロリー不足だったりするはずです。うまく焙煎出来るようになるまでは、かなり詰めていく必要がありそうに思っていました。でも若干の修正だけでここまでキレイに焙煎出来るように作られたのは、本当に驚きです。僕が思うに、恐らくそれは、普段から様々な物作りをしていることで獲得した、DIYの達人ならではのセンスに違いありません。
焙煎機のグレード云々ではなく、
「豆にカロリーを加える」という極シンプルなことに気付かされました。
感動する僕に、野口さんは「今度の休日に餅つき大会があるから、良かったらご参加ください!」とお誘いくださいました。偶然その日は僕の奥さんも休みだったので、二人で参加することになりました。その様子は次回のコラムにて…。


この記事へのコメント


おこめ

いいですね


ぽんで

出会いって大切ですよね


ほな

さすが、日本のレモン。


ほな

レモンの黄色が鮮やか。

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