第97話 もちつきだけじゃない日

第96話からの続き～

神奈川県川崎市にある黒川青少年野外活動センターで、所長の野口さん（愛称：ロバさん）とコーヒーについて熱く語り合った僕は、センターのイベント「黒川のもちつき」にご招待頂きました。そこにコーヒーマニアの方がドリップしに来るので、是非紹介したいとのことだったのです。その日はウチの奥さんもお休みだったので、二人して電車で行きました。自転車と電車では同じ場所へ行くにしても印象が全く異なります。自宅の最寄り駅から最短で30分もかからない場所なのに、車窓の風景はどんどん変わり、あっという間に里山に囲まれた静かな駅へ到着しました。

センターは駅から徒歩3分程度です。会場へ着くと、広場は信じられないほど大勢の人で溢れ返っていました。その数なんと700名余り！ロバさんを探すにはあまりに多過ぎます。その時僕らに気付いたスタッフの方がすぐに呼び出してくれました！現れたロバさんは満面の笑みで僕らを迎えてくれ、自ら会場内を案内してくれました。お忙しいはずなのに、ホントに恐縮です。そのあとは僕らで各ブースを回ることにしました。

と言っても、さてどこから回ろうか…とにかく魅力的なブースがいろいろ。今回メインの餅つきブースを筆頭に、そのお餅を振る舞うカウンター、壺焼き＆石焼イモ、豚汁、BBQ、ハンドドリップのコーヒーなどの飲食ブース。体験型ブースは煎餅の手焼き、焼きマシュマロサンド作り、竹馬やコマ回しなどの昔遊びブース、松ぼっくりの置き物やしめ縄飾りを作るクラフトコーナーなど、盛り沢山です。

まずは煎餅の手焼きに挑戦してみることにしました。白い煎餅生地を受け取り、炭火の網焼きにします。程良く焼けたところで麺つゆを塗って、海苔で挟んだら出来上がり♪芳ばしくて想像以上に美味！そのままマシュマロ焼きも味わったところで、いよいよコーヒーのブースです！ドリップ器具を拝見したり、淹れ方などの質問に答えるうち、僕も１ドリップしてみることになりました。でも用意して頂いたコーヒー粉が、ミルの設定違いで超粗挽きになってしまったとのこと！普通はNGな状況ですが、ここは腕の見せ所かとチャレンジしてみました。

粗挽き過ぎだとコーヒーのエキス自体が出にくく、粉の間を湯がすり抜けてしまうので薄味になります。だからその分、可能な限りゆっくりと点滴で攻めれば、それなりに美味しく出来るはずです。僕は湯量を出来るだけ少なく調整し、イイ感じにドリップを進めて行きました。ところが途中途中で尋ねられる質問に答えながら淹れるうち、予定の湯量を超えてしまっているじゃないですか！慌ててドリッパーを降ろしましたが、時既に遅し。結局薄味のコーヒーに仕上がってしまいました。意識し過ぎはやはりダメですねぇ。いつかリベンジせねば！

その後もつきたての餅や豚汁を堪能し、最後にBBQのお裾分けも頂いたところでイベントは終了しました。するとスタッフの皆さんが片付け始めたと思ったら、あっという間に撤収が進んでいきます。最後まで関わる皆さんの想いと力が一つになった素晴らしいイベントでした。また以前から気になっていたロバさん自慢の壺焼きイモ。これは持ち帰って自宅で食べたのですが、信じられないくらい甘くてビックリでした！

そして後日談。黒川駅前のネスティングパークという広場で、ロバさんが壺焼きイモをやると知り、どうしても食べたくて再び黒川を訪れました。そこでもロバさんからパーク内のショップの方々を紹介してくれたおかげで、コーヒー談義や自転車談義の楽しい時間を過ごしました。一見なんでもない里山の開発地に、こんなにもワクワクする場や機会があるなんて想像もしませんでした。それも全てロバさんの人柄のおかげです。その姿勢に共感した僕は、ただ「受け取る」ばかりでなく、「与えられる」ことの楽しさや喜びを形にしていきたいと強く思ったのでした。