第20話 ミルと見る未来

  • 2016.11.14
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今でこそ「コーヒーの人」として憶えて頂けるようになったけれど、初めは勿論ただの素人。
でも色々な出来事が重なって「カフェを開業しよう!」と思い立ってしまったのが、今日に至る始まりでした。
当時飲んでいたコーヒーは、せいぜいドリップパックかインスタント。
だから歩むべき道筋を考え、大きな決断をしなくてはならなかったのですが、同時に、取り急ぎ出来ることはやろう!と思って、まず最初にしたことがあります。それはコーヒーミルを買うこと。
初めてのミルは伝統的なスタイルのごく標準的なもので、少し大きいけれど良く手に馴染むものでした。 当時僕はそのミルで、色んな豆を挽いてみたり、同じ豆を挽き続けたり、様々にコーヒーと向き合いました。 その時どうしてそのモデルを買ったのかは記憶にないけれど、最初の一台として最適なものだったと、今でも思います。

たくさんのミルがある中で「ちょうどいいモノ」を選ぶには、使う状況や目的に対し、知識や経験で選択出来れば間違いはないですよね。 でも例え知識や経験がなくとも、人は目的地を明確に思い描いている時、自然とそこに向かってまっすぐに進んでいく、とも思います。 「行きたい、なりたい」って意識して思う状態じゃなくて、半ば無意識に「見ているところに向かう」ような。
でもこれは「願えば叶う」とか、「思い続ければ実現する」とか、ネット上で見受けるその手のお話ではないですよ。
まあ、ここもネット上ですが。

僕は以前、パラグライダーをやっていたことがあります。パラシュートみたいなのを操作して空を滑空するスポーツですね。
上昇気流をうまく捉えると、ずっと飛び続ける事も出来ます。
当時僕は体験コースのような形で、スクールに通っていました。最初は高低差30mの、スキー場の初級コースの様な傾斜地を駆け下りてテイクオフ、少し滑空し、着陸する、を繰り返し練習します。 それが出来て、次は60mある崖っぷちの坂から滑空し、森の向こうにある最初の傾斜地まで飛んで着陸する、というステップに移ります。
僕は60mからのテイクオフに苦戦していたのですが、その日初めてテイクオフに成功し、空へ飛び出すことが出来ました。 上空では無線の指示通りに操作すれば、着陸地点まで飛べるのですが、僕は想像以上の高さや光景を前に、すぐに頭が真っ白になりました。そう、一種のパニック状態です。
本来の飛行ルートより左を滑空していました。右手のロープを引けば右旋回し、ルートに戻る事が出来ます。 無線からは「右手を引け!!右!右!」と叫びに近い声が聞こえてたはずです。 でも僕は前方に広がる森の中を見つめていました。 そこは向かってはいけない場所だと分かっています。 でも正しいか間違っているか、ではなく、人はとにかく「見た方向に進む」のです。

「なりたい自分をイメージして云々」というのは、単にこの、「人は見た方向に進む」という性質を、上手く二次利用した小技なのかなと、経験的に僕は思うのです。
深い森に向かって滑空した僕は、墜落しました。激突した太さ1m以上あろう大木は、救助が来ると30cmにも満たない幹だった事に気付きました。 何か大きな物事を前にすると、時々その経験が正しいコースに気付かせてくれていると思います。時々ね。


この記事へのコメント


おこめ

美味しいコーヒーが飲みたくなりました


ほな

手動ミルはなつかしい。


ほな

風情のあるミル。


ほな

旨いコーヒーを飲みたい。


ほな

コーヒーの原点。

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