第21話 コーヒーの香りはメロディに乗せて

  • 2016.11.28
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高速道路のサービスエリアでは、レギュラーコーヒーをドリップする自動販売機をよく見かけます。ドリップ中は中の様子が小さなモニターに映し出され、軽快な音楽も流れてきます。
昔のヒット曲「コーヒールンバ」のメロディですね。この歌は「恋を忘れた男にコーヒーを飲ませたら、心がウキウキしてきて、やがて女性に恋をした」というようなもの。そして歌詞には「モカマタリ」が登場します。ブレンドではなくシングルオリジンですね。偶然だけど、これはまさに先日のコラムで書いたイエメンの豆の事です。
勝手に想像すると、この歌のコーヒー豆は農園栽培ではなく、自生しているコーヒーの実を集めたものかもしれません。
男にコーヒーを飲ませたのはアラブの偉いお坊さんだと歌われていますが、当時はイスラム圏の宗教上の秘薬であり、飲料として普及する遥か昔のこと。現在のような商業栽培はほぼ無いと思うからです。当然ながらオーガニックですね。淹れ方もアラビア式と呼ばれる当時の古典的な方法であることは間違いないでしょう。煮立てて淹れるやり方です。分からないのは、豆を精製して使ったのか、果肉が付いたまま加工したのか。もしかしたら焙煎の概念さえ生まれてなかったかもしれない。今度調べてみようかな。
「コーヒールンバ」のひと言で、ご飯3杯おかわり出来る感じです。
この曲に限らず、他にもコーヒーが登場する曲はいろいろありますね。それも心象風景を表すものとして用いられる事が多いです。
またよく聴くと、そこで表現される状況は、二つの感情に集約されているように思います。
ひとつは、何か「悲しい」出来事や「切ない」状況に対して登場する、ほろ苦いコーヒー。もうひとつは、「愛や幸せ」の象徴として登場する、モーニングコーヒーや温かなコーヒー。

ネガティブとポジティブ。コーヒーは、感情面で真逆を向いた二つの方向を表現しています。

また往々にして、ほろ苦いコーヒーは「過去」の出来事に呼応し、モーニングコーヒーや温かなコーヒーは、これから始まる「未来」を予感させる歌詞になっています。「希望」と言い換えても良いかもしれません。

時間軸という部分でも、真逆の方向を表現しているのです。
一般的な印象ですが、これまで日本人の好きなコーヒーの味わいは、苦味やコクのアクセントが効いたコーヒーでした。深煎りのコーヒーです。でもこの数年拡がりをみせる、スペシャルティコーヒーと呼ばれる世界では、主にフルーティーな酸を感じる、明るく華やかなコーヒーが評価の中心です。浅煎りから中煎りのコーヒーです。また現在は全国に普及したコンビニコーヒーも、それまで人気だったエスプレッソがベースのシアトル系コーヒーと違い、バランスの良い味わいが多いです。

求められるコーヒーの味わいが、苦味系から酸味やバランスの良い方向に振れたのは、多くの人々が無意識のうちに、「愛や幸せ」に気付き、「未来」に明るい「希望」を求めている気持ちの表れかもしれません。


この記事へのコメント

ほな

きれいな空。

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