第33話 ペーパーとペーパーレス

  • 2017.05.29
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あまりにもプライベートな話なのでどうしようかと思ったのだけど、せっかくなので書いてしまおう。
5月中旬のある日、新緑に囲まれた美術館にあるレストランで、僕と彼女は披露宴を挙げました。
昨年の初冬に入籍は済ませていて、当初は簡単なパーティーでも開こうと考えていました。でも彼女は心の内に「ちゃんとウェディングドレスを着て、気の合う仲間を招いて楽しい時間を過ごしたい」という想いを秘めていた事が分かり、そこから急遽2ヶ月半くらいで宴の日を迎えることとなりました。
時間的にかなりタイトだったため、充分なおもてなしの準備が出来たとは言えませんが、でもひとつこだわった事がありました。それは引き出物です。選んだのは「ペーパーレス」タイプのドリップセット。金属製のメッシュフィルターとガラス製のカラフェが組み合わさった、シンプルだけど存在感のあるアイテムです。

最近「ペーパーレス」は様々なものが登場してきました。多くの人は「紙を使わなくて経済的ね!」とか「手間がかからなくて便利ね!」などと考えて選ばれている気がします。でも一番のポイントは、同じ豆を使ってもペーパードリップの味わいとは全く異なる点にあります!知らない人に飲み比べしてもらったら、同じ豆だと言っても信じないかもしれません。その違いは「オイル」にあります。
コーヒー豆は本来たくさんの油脂成分=コーヒーオイルを含んでいます。ペーパードリップでは、抽出の過程でペーパーがオイルを吸収し濾過するので、透明感のある澄んだ印象のコーヒーに仕上ります。でもペーパーレスのフィルターは金属製。どこにもオイルを吸収する所がありませんから、その味わいは全て抽出されます。また微粉と呼ばれる粉状のものも通過するため、オイルを強く含んだコクのある味わいで、少し濁りのある感じに仕上がるのです。

引き出物を検討し始めた時、やはりコーヒー関連の何かにしようと思ったのですが、考え抜いた結果、まさかの「ペーパーレス」となりました。僕自身はペーパードリップが大好きで、美味しく淹れる方法やその魅力を皆さんに伝えることで、「良質なコーヒーのある、豊かなひととき」をお届けするのがメインテーマです。じゃあどうして「ペーパーレス」なのか?

今回招いた僕の友人・知人は、多くの人々と同じくペーパードリップで飲んでいます。つまりペーパードリッパーは皆持っているし、知っている。だから同じものを差し上げてもそれ以上にはなり得ない、と。
そこで「淹れ方は似ているのにこんなにも味わいが違うのか!」という体験を通じて、逆にペーパードリップの魅力を再発見して頂ける様な、そんな選択をしようと思ったのでした。僕はこの機会にコーヒーの持つ奥深さや拡がりをもっと感じて欲しい、そう考えていたのです。


しかし、書いてみて思ったけど、ホントに面倒くさい奴だな、自分。でもそんな奴を選んでくれた人がいたんだから、すごい話だ。

披露宴の翌日、僕らは新婚旅行ってヤツに行きました。
行き先はやっぱり石垣島(笑)でも今回はかなりレアな場所を訪れ、濃い人々に会い、様々な人生模様を垣間見る、研修旅行状態でした。そんな話はまたいつか!


この記事へのコメント


おこめ

おめでとうございます!


みやねこ

おめでとうございます❗
これからもあれこれこだわって下さい(笑)

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